■レポート、雑感リスト  
「パレスチナ(6)」
 

ラマラの友人からの電話だと、死者は7〜800人に達し死体も運びだせず腐乱し始めているということです。
広河さんのホームページで公開されている記事によると、未確認情報では死者は1000人に及ぶとも言われています。
イスラエル兵は、ここで起こっていることを国際社会が見たら決して許さないだろうと恐れをなし死体をブルドーザーで埋め、清掃を始めているということです。ブルドーザーで!彼らはゴミではありません。
けれども、ブルドーザーでの清掃行為そのものが、死体の数の多さを物語っています。ジェニンでのこれらの行為は、イスラエルに今後何年も重い十字架としてのしかかるでしょう。

テロ根絶を理由に占領地からの撤退を拒んでいるシャロン首相ですが、今の状況のもともとの原因は、イスラエル側のオスロ合意に違反する圧倒的な占領と植民地政策、そして一昨年のシャロンによるアル・アクサ神殿訪問にある事を忘れてはなりません。

アルアクサ神殿は、毎週金曜日にイスラムの人々がお参りに来るとても大切な場所です。
そこにシャロン首相は警察を伴って入り込み、抗議のために立っていたパレスチナ人に発砲、翌日は金曜日でしたが、シャロンはさらにそこに軍や警察を送り込みお参りに来た人たちに無差別に発砲、パレスチナ人にとって最も神聖な場所で死傷者を出し流血の事態を引き起こすという大変な挑発行為を行ったのです。
その事に抗議して始まった民衆運動が、今回のアル・アクサ・インテイファーダです。

シャロンはその民衆蜂起を「テロ」と位置づけ、封鎖占領を繰り返してきました。また、かつてのレバノンキャンプでのパレスチナ人大虐殺を指揮した張本人もこのシャロン首相に他ならないのです。

そして現在まで圧倒的な経済力と武力で主張を押し付け、パレスチナ人の基本的な人権生きる権利、自由、生活を国を挙げて奪ってきました。物資や人の流通を不当に阻み、教育を阻み、救急活動までも阻止してきました。民主主義を掲げている国がです。どんな政治的主張があるにせよ、それが正しくても間違っていても、とにかく今すぐ占領をやめて欲しいと強く思いました。
けれども大きな銃の前で、私だって何も言えなかった。暴力の前に、自由な言葉や心の行き交いをねじ伏せられるということの私の初めての体験でした。
家族や自分の命、生活、家が奪われる人々の思いは計り知れません。

もちろんパレスチナ人も必死で抵抗しています。
主な武器は石、銃などですが、軍を持たない彼らは自爆という武器が精一杯であり、最後の手段なのです。
けれども私が見たほとんどのパレスチナ人の本当の抵抗は、爆撃されても家族が殺されても、壁の無い外から丸見えの部屋でコーヒーを入れ、翌日から仕事に戻り、もくもくと瓦礫を片付け、冗談を言って笑う。人を受け入れもてなし、花の種を植える。人としての尊厳を失わず誇り高く生き続けユーモアを忘れない、そんな精神的抵抗でした。本当にみんなよく我慢しています。
そしてそれこそがイスラエル兵を焦らせヒステリックにさせているというのが、援助に駆けつけているたくさんの、ヨーロッパ人を中心とする外国人たちとわたしの間での共通の認識でもありました。

何故国際的な協議の場やジャーナリズムでは、占領(虐殺)とテロ(一つの爆弾)を同じ天秤にかけるのでしょう?
圧倒的な武力の前で、一つの抵抗も許されないというのでしょうか?
もちろん市民を狙った自爆行為を、私も受け入れることはできません。


けれども外国から特使が来るとなると直前に、シャロン首相は必ず挑発行為を繰り返してきました。
そして今回もパウエル長官がイスラエル入りする直前にジェニンでの大量の殺戮を行いとうとうキャンプのリーダーを殺しました。この行為は確実にパレスチナ人の抵抗運動を引き起こすでしょう。

わたしは、今起きていることは戦争ではなく、迫害と虐殺だと認識しています。
そしてもしもこれを今国際社会に止めることが出来なかったら、私たちは歴史の中でホロコーストから60年たったこの時代に、私たちの時代に、もう一度同じ過ちを今度はユダヤ人の手で犯してしまうことを許してしまうことになるのです。それは同時に、私たち自身の過ちにもなります。

さらに、テロ行為を理由にアラファト議長率いる現在のパレスチナ政府を「悪」と位置づけ排除したのち、アメリカやイスラエルにとって都合のいい政府を送り込み、都合のいい和平をどさくさに結ぶ。そんな骨抜きパレスチナ建国の懐疑心が止みません。

アメリカがとった、アフガニスタンや戦後の日本の国作りと同じシナリオを見ているようで身震いがします。素人感覚の考え過ぎだといいけれど。

それとも追いつめるだけ追いつめて、パレスチナの人々に、明日のパンのためのあきらめに近い和平を強いるのでしょうか?

50年近く戦ってきた彼らの長い長い苦しみはこれからも続くのでしょうか?

明日(4月14日)パウエル長官とアラファト議長が会談します。


森沢典子


追伸
一緒にウエストバンクをまわったフランス人のクロードは、今もアラファト議長が軟禁されている場所で外国人30人ほどと共にイスラエル兵からの盾となり、議長と寝食を共にしています。

また私の話を聞いて、国連事務所の東間史帆さんがPNGOのような組織をずっと探していたとよろこんで下さって、二人でラマンラのオフィスに訪ねたのですが、今はさっそく日本からの視察ツアーを企画しています。

また、エルサレムに助っ人で飛んできた朝日新聞社の特派員の方たちにもPNGOの活動のことを史帆さんが伝え取材が入り、今週新聞で大きく取り上げられました。

さて、私自身ですが、今後どのような活動が可能か考えています。

再来週は母校の青山学院女子短期大学で学生さんにお話する機会をいただきました。
児童文学者で恩師でもある清水真砂子さんがすぐに自分の授業を提供して下さったのです。
私から話を聞くことを「贅沢なこと」と表現し、受け入れて下さったこと本当に感謝しています。

明日は、渋谷で10代〜20代の人たち中心でやっているピースウオークの中心メンバーと会います。

何かほかに方法や機会があったら、是非ご助言下さい。


pages:

[<]1 2 3 4 5 6 [>]
 
midi.non.1110@icloud.com