■レポート、雑感リスト  
「パレスチナ(5)」
 

この他にも話しはたくさんあります。ありすぎて書ききれません。
もちろん関心をお持ちの方には積極的にお話ししますので声をかけて下さい。
写真もありますのでお会いしてお話するのでも結構です。

デ・アル・バラという北部の地域に散布された毒物とその影響を受けているというたくさんの妊婦さんや子ども達のことも気になっています。

どの話も裏付け調査が必要なのですが、クザール村を訪ねたのは夜九時を廻った後でしたし翌日は午前中にはガラーラのチェックポイントが閉まってしまうからと、駆け足で学校と病院をまわり、皆に背中を押されるように北へ向いました。
何故こんな状況なのにパレスチナで出会った人達はこんなにも暖かいのか、私を守ろうとするのか持っているものを分け与えようとするのか、何故私だけが別の世界へ逃れていけるのか虚しい気持ちいっぱいでエルサレムに戻りました。けれども、クザール村の話があまりにひどく、さらに何処の新聞社のアーカイブを調べてもその事に触れていなかったので、すぐにパレスチナの人権団体と、その時日本で執筆中だった広河隆一さん(パレスチナ問題について35年間取材やさまざまな活動を続けているフォトジャーナリスト、現在はパレスチナで取材中)にメールをしました。
翌朝すぐに広河さんから電話がかかって来て、これは大変なことだから、パレスチナ側だけでなくイスラエル側のジャーナリズムにも伝えた方がいいと言われ、ハアレツ・デイリーの編集者エウードさんを紹介して下さいました。エウードさんはその日すぐにテルアビブから、エルサレムまで駆けつけてくれました。
私は、聞いたことをそのまま話しました。

彼はすぐに再調査のための人を送ってくれました。私も一緒に行きたかったけれど、出国前日だったので後はお任せすることにしました。

日本に戻ってから、村で殺された総数にずれがあったものの残念ながらその出来事が事実であったことを知りました。

さてパウエル長官がいよいよイスラエル入りしシャロン首相と会談しました。

ずっとイスラエルを支え、大変な軍事国家に育て上げたアメリカの国務長官が仲介に入るのですから、パレスチナの未来にとって本当に明るい選択肢をきちんと用意してくれるのかとても不安です。

シャロン首相は一部撤退を行いテロ根絶を訴えながら、その傘下で、パウエル長官がイスラエルにたどり着くまでの間に駆け込み的に攻撃の手を強め、特にジェニンキャンプで大変な殺戮を行い、今現在も続けています。外部からの進入は、取材陣でさえ一切出来ないということがどういうことか私にははっきりとわかります。
ほんの一月前会って、一緒にたくさんの話をした一人一人のあたたかい眼差しが私の頭を廻っています。その人たちの身の上に今起こっていることを思うと本当に胸が張り裂けそうで、何も手につきません。
あの時もジェニンキャンプは大変な打撃を受けていましたが、そんな状況の中で人々は木々をきれいに刈り込み、花の手入れをし、コーヒーを飲みながら穏やかに家族や友人達と過ごす時間を楽しんで、私たちと目が合うと「ウエルカム!」とコーヒーを差し出したり、笑いかけたりしていました。
難民キャンプの子ども達が、うれしそうにニコニコ私たちの後についてくるのですがフランス人の女性がチョコレートを差し出すと、控えめな声で「ノーサンキユウ」と丁寧に断るのです。私がこれまで他の経済的に貧しい国で出会った子ども達のことを考えると、これは相当なことだと思いました。
日本の子どもだって、差し出されたチョコレートを「結構です」と丁寧に断れるとも言えません。彼らは、何もかも失っても、誇りは失っていませんでした。それはイスラムの精神と、パレスチナの母親の教育の水準の高さによるものだとどのパレスチナ人に会っても感じた今回の新しい驚きでした。

その人たちを、今次々に殺しているのです。そして誰にも止めることができないなんて。
これだけ国際社会の目が光っていながら、何故こんなことが続けられるのでしょう?どうして誰もそこへ派遣しないのでしょう?私が特使だったら、まずそこへ向うでしょう。不当な制限を解き事実を見るでしょう。特使の権限は、そのためにあるんじゃないのですか?

ジャーナリズムを含む、他のものの進入を一切阻む理由として、パレスチナ人が爆弾を抱えイスラエル兵も10数人死に、危険だからだと発表していますが、ちょっとでもジェニンの人々の立場に立てば、閉じ込められた世界の中で、救出の可能性を全て絶たれた絶望的な状況を想像できるはずです。これは本当に恐ろしい出来事です。

ただ死を、破壊を、すべての物の喪失を待つばかりの彼らの恐怖心や絶望感は、計り知れません。わたしも居たたまれない気持ちで何日も眠れずにいます。家族を殺されたり自分が無駄に殺されるのならばと、最後の抵抗の手段として爆弾を抱えてイスラエル兵の到着を待つのはむしろ当然でしょう。
ほかに何が出来るというのでしょう。
今ジェニンの人々をそこまで追い込んでいるのは、他でもないイスラエルなのです。


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