■レポート、雑感リスト
■10月2日新年のすばらしい贈り物 《日本語訳》
 

こんばんは

先日ご紹介した、イスラエル人ギラ・シヴィルスキーさんからの手紙
『新年のすばらしい贈り物』(イスラエル空軍予備役パイロット達からの
作戦参加拒否)について、日本語訳ができました。

呼びかけに応えてくださった青柳伸子さん、根本泰行さん、
山田和子さんの合同訳をかねこあさみさんが編集して
仕上げてくださいました。

この場をお借りしてお礼申し上げます。

〜〜内容について〜〜
パイロット達の「非合法な攻撃」という言葉、では合法的な
パレスチナへの攻撃ってなんだろう?

また、イスラエル、シオニズム、犠牲的精神、愛国心を大前提とし
軍人的立場も固持するこの声明の内容的な限界も気になります。

でもこの立場を踏まえて言わないと、今のイスラエルではこうした意見に
耳を傾けてもらえず、むしろ孤立してしまい、何の広がりも
見せなかったかもしれません。

そしてなにより、その立場の人たち、つまり忠誠心も強く
イスラエルの絶対的ヒーローである人たちの口から

〜〜こうした行為は非合法かつ非道徳的なものです。この直接的な
要因は、現在も続いている占領であり、この占領こそが、イスラエル
社会全体の崩壊を引き起こしているのです。
占領の永続は、イスラエル国家の安全ひいてはその道徳心を決定的に
脅かしています。〜〜

・・・・と述べられたことは、大きな意義があると感じています。
きっとイスラエル国内の人々の間でも「え?イスラエルは非合法なことを
しているの?本当に占領しているの?」っと遅まきながら思い知らされた
人たちもいるのではないでしょうか?

〜〜〜この訳文について〜〜〜
多くの方に読んでいただきたいので、転送、転載は自由にお願いします。
その際、出典や訳者氏名などを添えてお使いください。

よろしくお願いします。

森沢典子

**********************************

「新年のすばらしい贈り物」

──空軍兵士達からの作戦参加拒否──

差出人:ギラ・シヴィルスキー
日時:2003年9月25日(木)午前6時19分

友人の皆さんへ

今週の金曜日に始まるユダヤ教の新年"ロッシュ・ハシャナ"に向けて、想像しうる限
り最高の贈り物がここにあります。イスラエル空軍パイロット25名[*1]が任務の履
行を拒否したのです。イスラエルの人たちが明日の朝刊でこのことを知って、どれほ
ど大きな衝撃を受けることになるか──これを理解するには、イスラエルにおいて空
軍のパイロットたちは英雄であり、もっとも優れた頭脳を持ち、もっとも勇敢な、最
高の人々であるとみなされていることを知る必要があるでしょう。

以下に示すのは、イスラエルで圧倒的発行部数を誇るイディオット・アハロノート紙が
インターネット配信した記事を私が急いで英語に訳したものです。無味乾燥な感じを
受けるハアレツ紙の記事よりもはるかにたくさんの洞察を含んだものであると思いま
す。ぜひお読みいただいて、この出来事の持つ意味、占領政策を支えている根幹を揺
るがすことになる衝撃を感じ取っていただければ、と思います。

パイロットたちによるこの手紙は、新年への祝福です。どうか、この出来事がきっかけと
なって、イスラエルによる占領の速やかな終結を促し、理性ひいては平和の夜明けを
告げるものとなりますように。中東で、そして世界の至るところで。

シャローム/サラーム。エルサレムより平和を祈って

ギラ・シヴィルスキー

―――【イディオット・アハロノート紙ネット版より】(ヘブライ語→英語を重訳)―――

==空軍予備役パイロット:『私たちは占領地域内における攻撃を拒否する』==
               [*2]

【 空軍予備軍のパイロットたちと乗組員たちは、以下の手紙を本日、
 ダン・ハルーツ空軍司令官に送った。

 「私たちはイスラエル国家が占領地域において行ってきた非合法で
 非道徳的な攻撃命令を遂行することに反対する」           】


計25人のパイロット、元パイロット、そして乗組員たちは本日(水曜日)、空軍司令
官ダン・ハルーツ将軍に意見陳述書を送り、占領地域内での攻撃任務に参加しないと
宣言した。

この週末に発行されるイディオット・アハロノート週末特別版の記事は、この手紙の
署名者のうち、もっとも著名な人物としてイフタフ・スペクター予備軍[*3]准将の
名を報じている。スペクターは空軍では伝説的なパイロットで、数々の飛行編隊や基
地の指揮をとり、イラクの原子炉爆撃に参加した経験を持つ空軍司令官候補だった。
若いパイロットたちは、スペクターの戦場での武勇伝や彼自身の著作に接して育って
きた。スペクターは現在も、飛行学校の教官として空軍予備軍に属し、飛行を続けて
いる。

この手紙に署名をした人々によれば、〈灰色の(表沙汰にはなっていない)攻撃拒
否〉が既に空軍内部で広まっており、それには常備軍のパイロットすらも含まれているら
しい。暗殺作戦に関与するのを拒否しているパイロットは何十人もいるが、彼らは、
それぞれの飛行隊司令官との個人的な交渉によって内密裡に暗殺作戦の任務からはず
れている。

攻撃参加拒否者のリストに脆[もろ]さがあるとすれば、少なくとも現時点において
は、手紙に署名した者の中に攻撃用ヘリコプターのパイロットがたったの二人しか含
まれていないことだろう。攻撃用ヘリコプターのパイロットこそが、ほとんどの暗殺
作戦を実施しているのだから。

チャンネル10のインタビューに対し、空軍司令官は次のように語った。「これは空軍
を揺るがすような大地震ではない。この事態に対して、冷静に対処することが大切で
ある。こんな手紙については、私は今まで聞いたことがない。わが国の軍は、もっと
も人道的で、士気盛んである。これは政治的な意味合いを持った拒否である。まだ出
されていない命令の履行を前もって拒否する者がいようとは理解しがたい。政治的拒
否はこの国にとってのあらゆる危険の母体である。拒否という言葉が我々の言語の一
部になるようなことがあってはならない」

──────────────────────────────
意見陳述書 
全文:

「私たち、シオニズムと犠牲的精神、そしてイスラエル国への貢献という価値観のも
とに育った空軍パイロットは、常に最前線で仕え、イスラエルの防衛と強化のため
に、その大小にかかわらずいかなる任務の履行もいといませんでした。

「私たちは退役パイロットも現役パイロットも同様に、毎年何週間ものあいだイスラ
エル国に対して奉仕してきましたし、現在でも奉仕していますが、イスラエル国が占
領地域内で実施してきた非合法かつ非道徳な攻撃命令の履行に反対します。

「イスラエル国を愛し、シオニズムという大事業に貢献するよう育てられた私たちは、民間
人の居住地区に対する空軍による攻撃に参加することを拒否します。私たちは、イスラエル
国防軍ならびに空軍を引き離すことのできないわが身の一部とみなしています。そのような者
として、私たちは無実の一般市民をこれ以上傷つけ続けることを
ここに拒否します。

「こうした行為は非合法かつ非道徳的なものです。この直接的な要因は、現在も続い
ている占領であり、この占領こそが、イスラエル社会全体の崩壊を引き起こしている
のです。占領の永続は、イスラエル国家の安全ひいてはその道徳心を決定的に脅かし
ています。

「私たち、現役パイロット──戦う者、指揮官、ならびに次世代パイロットの教官─
─として仕える者たちは、イスラエル国を防衛するあらゆる使命のためには、イスラ
エル国防軍ならびに空軍に今後も奉仕することをここに宣言します」


署名者:Brigadier General Yiftah Spector, Colonel Yigal Shohat, Colonel Ran,
Lieutenant Colonel Yoel Piterberg, Lieutenant Colonel David Yisraeli,
Lieutenant Colonel Adam Netzer, Lieutenant Colonel Avner Ra'anan, Lieutenant
Colonel Gideon Shaham, Major Haggai Tamir, Major Amir Massad, Major Gideon
Dror, Major David Marcus, Major Professor Motti Peri, Major Yotam, Major
Zeev Reshef, Major Reuven, Captain Assaf, Captain Tomer, Captain Ron,
Captain Yonatan, Captain Allon, Captain Amnon"

(翻訳:青柳伸子・根本泰行・山田和子 編集:かねこあさみ)


編集者註
[*1]……後に2名が加わり、27名と新聞で報道された。(共同通信他)
[*2]……イスラエルでは「占領」という表現を用いないため、原文ではthe
Territoriesと書かれているが、これは「占領地域」を意味するので、ここではそう
訳出した。
[*3]……イスラエルにおいて「予備役」とは(男性の場合)18歳からの3年間の兵
役を終えた後、42歳まで毎年約1か月義務づけられている兵役であり、予備役兵は若
い兵士の指揮をとるような現役の兵士と言っても良い位置づけにある。

ギラ・シヴィルスキー
[イスラエルの人権団体、B'Tselemやウィメン・イン・ブラック、バット・シャロームなどで
活躍してきた平和活動家。レズビアン・フェミニスト。また、イスラエル、パレスチナの
女性達による「公正な平和のための女性連合」の創立者の一人でもある]

 
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