■レポート、雑感リスト
2003年9月6日   暗殺されたハマスの政治的指導者 アブ・シャナブさんとの会話

[8月21日、イスラエル軍はハマスの政治的指導者であったイスマイル・アブ・シャナブ氏をミサイルによって暗殺した。(この間の連続暗殺についての参照記事はこちら)それは「テロリストの暗殺」という言葉だけで片づけられてしまっているが、現実に彼らが何を考えていたのか、その言葉はまともに報じられたことがほとんどないに等しい。パレスチナを訪問し、現地の報告を行ってきている森沢典子さんから、彼女が昨年の夏にアブ・シャナブさんと会話した内容とともに送られてきたメールをここに掲載します]

 

今年に入ってロードマップ、停戦合意・・・とパレスチナ問題に 解決の兆しが見えたような気がした
そんな空気はいつのまにかどこかへ消えていきました。
なぜでしょう?
この間何が起きたのでしょう?
下記にイスラエル人ジャーナリスト、ウリ・アブネリの記事を参照してみます


8月8日、イスラエル軍兵士がナブルスでハマスの活動家を2人殺害。
───だが、(ハマス側からの)報復は抑えられた。
12日、ハマスの自爆攻撃者がロッシュ−ハアイン(Rosh-Ha’ayin)でイスラエル人をひとり殺害、別の自爆攻撃者がアリエル入植地でひとりを殺害。この自爆攻撃者はいずれもナブルスの者だった。
───ハマスは、停戦は継続するとの声明を発表。
14日、イスラエル軍は、ヘブロンのハマス軍事部門のリーダーであるムハンマド・セーデルを殺害。
5日後の19日、ヘブロンからやってきた自爆攻撃者がエルサレムのバスの中で自爆、男性・女性・子供の計20人を殺害した。
2日後の21日、イスラエル軍は、ハマスの4番目の地位にあるリーダー、イスマイル・アブ・シャナブを暗殺した。
こうして、ようやく目的は果たされた。パレスチナの複数の組織が停戦の破棄を宣言したのだ。シャロンとその仲間たち(Sharon and Co.)は欣喜雀躍した。数時間とたたないうちに、イスラエル軍は再びパレスチナの街々の中心部に侵入し、逮捕と家屋破壊(たった1日で40軒以上)の饗宴を開始した。
(「戦争中毒者のドラッグ」 訳・かねこあさみ・山田和子 全文はこちら


 日本の報道はどうだったでしょう?
 8月14日イスラエル軍が行なったヘブロンのハマス軍事部門のリーダーの殺害までは、本当に小さな記事でした。
 
そして19日、突然新聞の一面にカラーで焼け焦げたバスの写真とともに「自爆テロ」と大きな見出しが付き、エルサレムのバス爆破について報じられました。
 
 何も知らない人は、これが事の始まりだと思うでしょう。
 
 そして21日シャナブ氏の暗殺については、各社一面のトップ記事になりましたが、その見出しは「ハマス停戦破棄」でした。イスラエル軍が空からミサイルを落とし市民を巻き込んだにも関わらず。
 私たちは、またパレスチナ側が、せっかくの和平を破棄した・・・という印象をもちます。そしてテロ組織の幹部なのだから、市民を巻き込んだ超法規的な暗殺でも「しかたがない」とうような受け止め方をしてしまいます。
 
 なぜ多くの大手新聞社は、この形の報道の枠にはまり込んでしまうのでしょう?
 それがシャロン首相の思惑通りであることを、ウリ・アブネリは痛烈に批判しています。(上記掲載)
 けれども何の疑問ももたずに日本でニュースを拾っていくと、ハマスは本当にただのテロ組織のような気がしてきてしまいます。
 その後アメリカは、直ちにハマスへ流れる資金の凍結を行う大統領令を出しました。
 私は震えてしまいました。
 なぜならば、パレスチナ、特にガザで、どれほどハマスの支援活動によって生き延びている人がいたか、貧しい難民キャンプの家族の家を泊まり歩きながら実感していたからです。
 
 またハマスは、一部の人たちの組織・・・ではなく、パレスチナの民衆そのものであることも。
 
 いえ、ハマスはやはりテロ組織なのかもしれません。政治的な理由を掲げ、市民を狙った殺戮を行うとすればそれが後から「誤爆です」と言い訳をしようが、「やりました」と犯行声明を出そうが、それはテロであると思います。
 
 ならば、例えばアメリカは1960年以降ベトナム戦争だけで200万人を越える市民を殺害、湾岸戦争、アフガン攻撃、今回のイラク攻撃だけを合わせても12000人以上の一般市民を殺しています。(2003年8月14日四国新聞より)
 
 ここに日本に落とされた原爆で亡くなった20万以上の人の数は入っていません。でもアメリカ軍への資金の凍結については、聞こえてきません
 
 イスラエルは、ハマスの幹部暗殺・・・という名目でもう何度ガザの市民の上にミサイルを落としていったでしょう? 昨年夏は、たった一人のハマスの幹部を狙ったとして、住宅地に1トンのミサイルが撃ちこまれました。
 そのミサイルはマンションの一棟を完全に破壊した後、放射状に飛弾するよう仕掛けがしてあり、無数の砲弾が周りの家の壁を突き抜け、閑静な住宅地を広範囲で破壊、160人以上の死傷者を出しました。[写真]
 その多くは夏休みを迎えたばかりの子どもたちでした。
 ハマスが停戦を呼びかけることが予定されていた直前のこうした攻撃はその後いくつもの、イスラエル市民を巻き込む自爆攻撃につながっていきました。
 
 今年の春も、ハマスの幹部が乗った車をめがけてミサイルが撃ちこまれましたが、こういう時パレスチナの人々は現場から逃げず救出のために集まってきます。(4月8日)
 
 私だったらプロの救助隊に任せて避難するでしょう。いつもパレスチナ人のこのようなとっさの動きに胸を打たれてしまうのですが、それだけパレスチナではミサイルが落ちてくることが日常化しているというのも事実です。
 
 ところがこの日、人だかりができた同じ場所に30分後、再びイスラエル軍はミサイルを撃ちこんだのです。
 
 翌日、私は病院に駆けつけ、この攻撃で怪我をした多くの青年、子どもたち、泣き崩れる家族達、怒りに震える医者達に会いました。顔中に破片を浴びて、面影もなくなった血だらけの男性が私のビデオカメラに向かって悔しい気持ちをぶつけ、話をしてくれましたが、その映像はCNNで流れるわけでもなく私はあまりにも無力でした。 実は私自身も、はじめはハマスのことをただの「テロ組織」だと思っていました。パレスチナ支援の運動が人々の間に広がっても、「自爆」がそれを止めてしまうことや、自爆事件が起きる度にますますパレスチナの平和が遠のくような気がして胸が苦しくなること、そもそも「自爆攻撃」という戦い方にどうしても共感できず、それが起きる度にがっくりと肩を落としていました。
 
 自爆について現地でいろいろな方と話すうちに、パレスチナの一般の人々と議論していてもだめだ・・・組織している本人に会わなくては。そう思うようになりました。また、ブッシュ大統領やシャロン首相の主張が次々にマスコミを通じて伝えられるのだから「ハマス」の主張も一度きちんと聞いてみたい・・・という思いもありました。
 
 それで、二度目にパレスチナを訪れた昨年夏、「ハマスって何?」ということを聞きに、そして「自爆攻撃をやめてください」と伝えに、地元の方の協力を得て軍事部門の最高幹部ランティシさんと、政治部門の最高幹部アブ・シャナブさんを訪ねて行きました。
 
 その時はお話した後も、「二人とも戦う理由ばかり並べて!」っと当然ハマスを支持することも、納得することもできないまま戻ってきたものの、どうしても忘れられない言葉がありました。
 シャナブさんが涙ぐんで
「信じてほしいのですが、世界というものは弱い立場のものの声をけして聞こうとはしないものです。」
と言った言葉が、その後もずっと心から離れませんでした。
 
 シャナブさんは、アメリカで学び、ガザに戻り、大学の先生として働いていました。パレスチナの現状にまっすぐに向き合い医療、教育、音楽、様々な活動を展開しながらも闘わざるを得ない状況の中で、軍事部門を作っていった経緯をゆっくりと話しました。(全文は末尾にあります。)
 
 その中で他にも次の言葉は印象に残っています。
「ハマスはテログループではありません。私たちは自分たちの土地で生活している「パレスチナ人」です。」
「私たちはすべての国際社会に向かって、私たちの自由に向けての闘いを支援して欲しいと懇願しています。自由以外に何も望んですらいません」
「私たちはイスラエルが占領しているから自爆をしているのであって、私たちは本来そういう民族ではありません。私たちは平和に暮らしたいです。自分達を教育したいです。自分達の社会のことに力を注ぎたいですし、貧しい人を助けたいと思っています。」 シャナブさんとはその後、メールや電話でのやり取りが続き個人的にもいろいろな話を聞かせてくれるようになりました。
 
 春にお会いした時も、ちょうどパレスチナの新しい首相アッバス氏がハマスとの交渉のためガザ入りした日で「これから会います」とおっしゃっていました。
 地元では、アメリカの差し出した首相・・・という印象のアッバス氏を否定する声も多くあった中、シャナブさんは「交渉します」と言っていました。そして「イスラエルはオスロ合意を利用してパレスチナを苦しめてきました。それと同じ内容のロードマップを受け入れることはできません。まずイスラエル軍の、パレスチナ自治区からの撤退なしにどんな和平が望めるというのでしょう?私たちが望むことは占領の終結だけです」・・・というシャナブさんの主張は私でさえ、簡単に納得のできる当然の望みでした。
 
 以前ハマスは48年に建国宣言をしたイスラエルの存在そのものを認めず、すべてのイスラエル人を追い出す・・・という「逆シオニスト」のようなイメージがありますし実際にそういう主張を繰り返していた時代もあったと聞きます。
 
 けれども私がお会いした昨年夏から今年の夏までシャナブさんは個人的にも、ハマスのスポークスマンとしても、一貫して1967年のラインまで(現在のパレスチナ自治区から)のイスラエル占領軍、入植地の撤退を訴え、「イスラエルはスーパーパワーだ、私たちにはとても適わない。現実的にイスラエルとの共存以外、道はない」と繰り返し言っていました。(読売新聞他)
 
 そのシャナブさんをなぜ和平合意がすすむさなかに暗殺する必要があったのでしょう?
 
 イスラエルが本気で和平を望むのなら、絶対に殺してはいけない相手だったと思います。
 
 強硬派のランティシ氏を「暗殺失敗」の怪我にとどめ、穏健派、まとめ役のイスマイルさんをこの時期に暗殺したことに、イスラエルのおぞましい悪意を感じずにはいられません。
 
 ウリ・アブネリの記事の中で、なぜ政治部門のリーダーとしてよく知られているシャナブ氏を殺す必要があったのかを皮肉をこめて書いている部分がありました。イスラエルのテレビで軍担当官が「なぜ殺したか」それは「簡単だったから」と口を滑らせた・・・と。エルサレムのテロの後、軍事部門のハマス幹部が皆姿を隠していたのに対し、シャナブさんは普段どおり表に出ていて狙いやすかっただけで、ただその後の「停戦破棄」をパレスチナ側から言葉で引き出すのに利用し、しかもそれは成功してしまった・・・ということを書いています。
 
 日本では、シャナブさんの暗殺が、各新聞の一面トップに出たものの、「ハマス停戦破棄」という見出しになっていたうえほとんどニュースで扱われることはなく、イスラエルの超法規的な暗殺方法に対する批判も出ずイスラエルやアメリカの思うままにことが運ばれていくのを指をくわえてみているような気分です。
 
 私はイスラエルの軍事占領や壁の建設をまったく支持できないように占領に抵抗するハマスの闘い方を全面的には支持できずにいます。でも全面的に否定もできずにいます。なぜなのか、ずっと考え続けています。私自身、きっとずっと葛藤していくことでしょう。またハマスについてすべてを知っているわけではありませんしハマスについて語るのは、とても慎重であるべきだと思ってきたのでこれまでは控えていました。
 
 でも今のままでは、ハマスだけが悪の根源で、それだけがパレスチナ−イスラエル問題の原因で、それを潰すのが自治政府の役割で、それができないのだからイスラエル軍は何をしてもいい・・・という論理の中でパレスチナを内部分裂させ、自治政府の代わりにハマスが作り上げた貧困者たちの支援のネットワーク───事実上パレスチナの人々の暮らしを支える柱の一つ───を潰し、イスラエルの一方的な攻撃や作戦を正当化する・・・・ということに、私たちみんなで加担してしまいます。
 
 ヨーロッパでは、ハマスがテロ組織であるかどうか議論が起きているとききます。
 
 日本のマスコミも、世論も、それが起きるほどの深い土壌も関心もまだまだなく、とても表面的にイラク、北朝鮮パレスチナのテロや脅威をひとくくりにし、一面的な報道や対策ばかりが繰り返されているような印象を受けます。
 だからせめて「ハマス」「テロ」について私たちはもう少し複雑さを受け入れて議論を繰り広げ、一枚岩で語り済まそうとするアメリカやイスラエルの論調をけん制してもいいのではないかと感じています。
 
 昨年の夏と今年の春のインタビュー3時間分のうち昨年の夏の分だけ日本語で文書に起こしたものをちょっと長いのですが下に貼り付けました。
追伸 ガザで行われたシャナブさんの葬儀には、チェックポイントの封鎖にも関わらず、北側の人々だけで10万人を越えたと聞きました。
                         森沢典子



イスマイル・アブ・シャナブさんとの会話

N―(森沢典子)
ハマスという名前は日本で知られていますが、自爆テロを行う組織というイメージが強いです。でもガザの地元の人々は「ハマスが私たちを助けてくれる」と言います。軍事行動以外の活動について話していただけませんか。

S―(イスマイル・アブ・シャナブ)
はっきりさせましょう。ハマスはテログループではありません。アメリカは、実態を曲げようとしています。残念ですが日本のメディアはアメリカの影響を受けていますね。けれども、私たちは「アルカイダ」ではありません。私たちは自分たちの土地で生活している「パレスチナ人」です。
イスラエルが私たちの土地を占領しているので、それに抵抗しているのです。外国の占領に抵抗するのは正当です。
国際的な定義から言っても、イスラエルの戦車で、イスラエルの軍隊で、イスラエル入植者によってパレスチナの領土を占領しすべてのパレスチナ人を支配しているイスラエル政府のほうがテロリストです。
でも、アメリカのメディアはそれをねじ曲げ、間違ったハマスのイメージを作り上げてしまっています。「ハマス」はイスラエルの占領に抵抗するパレスチナの民間組織です。ただし、この「抵抗」というのは軍事的なものだけではありません。政治的、社会的なもの、その他さまざまな活動を通してなされています。
例えば、イスラエルの占領によって私たちの生活はさまざまな影響を受け、傷つけられていますから、まず社会活動が大切になります。なぜならイスラエルの占領政策は、パレスチナの人々を貧困に追い込み、人々が何を望んでいるのかについては気にも留めません。ですからそれを補う活動が必要です。そこで、ハマスは人々の生活をサポートする社会部門を持っています。
第二にイスラエルは、パレスチナ人から教育の機会を奪い、無知に止まるようにし、労働者の質も下げようとしています。ですからハマスは教育部門も持っています。
そして第三に、イスラエル兵はパレスチナ人を殺し続けています。ですからそれに抵抗するために、ハマスも軍事的な手段が必要です。たとえそれが簡素な武器でイスラエルの持っている武器とは比べものにならないとしてもです。これはイスラエルの占領政策に対する、私たちの拒否を表す行動の一部なのです。私たちから土地を奪い、自由を奪って、他の国々のように普通に暮らすことを阻み続けているのですから。
このようにハマスは広範な活動を行なっています。軍事部門、政治部門だけでなくて、コミュニティーをサポートする社会部門が大切で、さまざまな形でイスラエルの占領政策に向けて対策を立てているのです。

N  コミュニティーの中の活動についてもう少し話してください

S  ハマスは前回のインティファーダ(民衆蜂起)のあと1987年に設立されました。それ以前からあったイスラム運動の一環として始まりました。当時、このイスラム運動は社会、教育活動を中心としていました。ですから私たちは音楽クラブ、学校、慈善プログラムを持っています。特に貧しい人たちを助けるための様々なシステムがあります。
このような形でハマスは、ガザ地区内のパレスチナ・コミュニティー全体を枝先までサポートするさまざまな社会活動のシステムを作り上げてきました。私たちは困っている家族を支援するのに成功しています。なぜならばイスラムの教えは、困っている人たちを助けるように導いていますから。
ただ私たちの社会は込み入っていますので、お金を困窮した人々すべてに私たちが直接届けることは、とてもできません。ですから、様々な社会支援組織を作って、それぞれが募金をして助けを必要とする人々を支援するようになっています。ハマスの立ち上げた様々な組織は、イスラムの教えに従っていろいろな形で社会・慈善活動を行なっています。
それぞれの組織は実際にご覧になればもっと詳しいことがわかりますが、一般的にはイスラムの教えを基盤にして行なっています。

N  軍事的な目的も最初からあったのですか?

S  いいえ、始めはありませんでした。なぜなら、最初は助けを必要とする人々のために始められたプログラムでしたから。ずっとあとになって前回の1987年インティファーダが起こったときも、まず一般の人々によるデモを行っただけでした。その後パレスチナ市民がイスラエル軍に対し石を投げるようになりましたが、それに対してイスラエル軍が発砲するようになり、しばらくしてから変わっていきました。ハマスの軍事部門ができたのは1992年になってからです。インティファーダの後です。「自爆攻撃」が始まったのは1994年です。イスラエル人のバルフ・ゴールドシュタインがヘブロンのモスクの中でお祈りをしていたパレスチナ人を40人以上殺害し、このようにイスラエル側の行為がエスカレートしたことがきっかけとなりました。

N  兵士と戦うことではなくて、イスラエル一般市民を巻き込む攻撃についてどう思いますか?

S  まず、私たちは攻撃しているのではなく、自己防衛をしています。イスラエル軍が私たちの土地へやってきて私たちを殺すので、私たちもそれに抵抗しようとしているのです。
けれどもかれらは戦車を持っている軍隊です。みな重武装していて、とても手が届く相手ではありません。けれどもその敵と闘う必要がありました。どうすれば彼らに手が届くだろうか・・・ やがてイスラエル人は皆兵士となって私たちを攻撃するのだから、イスラエル人はみんな私たちの敵だ、と考えるようになっていきました。また兵士を殺すことができなければイスラエル人のコミュニティーにアプローチすることになります。市街に入り込んで、イスラエルに対して小さな爆破などを始めたわけです。それが始まりでした。イスラエルは、バルフ・ゴールドシュタインの後も、多くのパレスチナ民間人を殺害してきました。イスラエルは民間人保護のルールを破っています。
またイスラエル側は「パレスチナ市民など存在しない」と言います。ならばイスラエル民間人も存在しないのです。ルールはイスラエル側から押しつけられています。
ここで、現代史のなかで一つの重要な「証拠」を思い起こしてほしいと思います。アメリカは日本に原爆を落としましたね。長崎と広島に。世界中の人々の記憶に残っています。それは軍事目標に対してでしたか?そうではなく、民間人、そしてすべての生き物の生命に向けてのものでした。大変な残虐性で、アメリカの大きな過ちです。もし日本人がそれに対して反撃したとしても、私たちはそれを非難することはできなかったでしょう。パレスチナの状況はそれに似ています。イスラエルが私たちをこのような状況に追い込んだので反撃しているのです。

N  おっしゃりたいことはとてもよくわかりますが、原爆の後、日本は一度もアメリカを攻撃しませんでした。

S  それは日本が降伏したからですね。条約にサインしましたから。私たちは降伏したくないのです。

N  日本はその後アメリカに・・・

S  コントロールされ・・・

N  はい、コントロールされ、文化も変わりました。米を食べることを学校給食で制限されたりもしました・・・でも私たちは(アメリカを攻撃するのではなくて)他の方法で日本の文化を維持し、状況を変えるため道を探しています。
自爆攻撃をすることでハマスは何かを勝ち取りましたか。

S  いい質問です。
まず、すでに話したように、イスラエル側が始めたことであって、イニシアティブはこちらにありません。これは反応であることを確認してください。
イスラエルのコミュニティーを見てください。かれらは今みんな私たちと戦っています。17歳以上なら誰もが兵役に行き、訓練を受けて私たちの土地にやってきて発砲したり殺したりします。ですから、イスラエル人は全員が軍隊なのです。すべてのイスラエル人の手はパレスチナ人の血で汚れてしまっています。第二に、イスラエルのコミュニティーの大多数がイスラエル側のパレスチナ攻撃を支援しています。ますます多くのパレスチナ人を殺すシャロンを人々は選んだのです。シャロンを選んだ人たちは、シャロンが言っていることに責任を感じるべきです。だから私たちはイスラエルに対しての行動を起こし、イスラエル社会にメッセージを送っているのです。
「この攻撃の責任はシャロンにあります。あなた達がシャロンを選んでかれがこうした事態をあなた達にもたらしている。もしあなた達がシャロンをサポートしなくなったら、シャロンは人殺しをやめるでしょう。」
『私がやることは、国民が支持してくれている。この地を占領しているのは人々がそれを必要としているからだ』とシャロンはいつも言っているのですから。
ここには世界のどの地域とも違い、込み入った状況があるのです。イスラエル人が私たちの土地にやってきて、私たちを追放し、自分たちの家を建て、パレスチナ人が住めないようにしている。現在500万のパレスチナ難民がいます。イスラエル人はその難民の土地で、家に住んでいる。これらイスラエル人入植者達は、民間人とは言えません。彼らは勝手にやってきて、パレスチナ人を強制退去させ、入植したのですから。このようにとても複雑な状況があるわけです。
私たちのイスラエル内への攻撃の目的は、イスラエル人すべてがイスラエル軍によるパレスチナ攻撃、パレスチナへの占領政策に責任があるということ、そしてイスラエルが占領地から撤退しない限り、安全を感じることはできないということを伝えることです。
(イスラエル市民への攻撃が行われるようになって)やっと、イスラエル人も苦痛を感じるようになりました。以前は苦痛を感じてすらいなかったのでパレスチナへの占領を続けているだけでした。
この占領がいつから続いているかと言えば、それは1967年からですね。現在まで続いています。この占領政策に対しては、いくつも国連決議がありますが、イスラエルは従いませんね。なぜでしょう?それはイスラエルがプレッシャーを感じていないからです。今はプレッシャーを感じています。

N  パレスチナ内ではハマスの活動は成功していると思いますが、パレスチナの外ではまったく成功していませんね。

S  それはメディアの問題です。アメリカは、巨大なメデイアを持っています。イスラエルのメディアもとてもとても大きなものです。使用言語も偏っています。そして、イスラエル側の損害について集中的に報道しますがパレスチナの苦しみは伝えません。これは不公平です。
私たちは21世紀に生きています。私たちは以前より文明化されていなければなりません。しかし、実際は悪化しています。アメリカが人間の価値を悪化させてしまっています。かれらは攻撃を支援し、犠牲者を支援しません。この状況では私たちは何もできません。私たちの状況を弁明することもできません。メディアが公正ではなく、フェアではないからです。しかも私たちの敵は、メデイアと連携しています。
飲み物はいかがですか・・・?

N  21世紀といいましたが、現代は軍よりもメディアの方が重要ですね。

S  それこそ私たちの必要なものです。私たちは軍事的行動に興味があるわけではありません。私たちは平和に生きたいのです。イスラエル側が私たちに平和な暮らしをさせてくれません。かれらは私たちの土地に入植しています。ここはガザ地区です。本当に小さな小さな土地です。私たち120万人のパレスチナ人がこの小さな土地でひしめき合って暮らしています その小さな土地をイスラエルは35箇所以上でコントロールしています。道路を封鎖して、この小さな地区の《内側》で、パレスチナ人を締め上げています。入植者たちはロシア、ヨーロッパ、アメリカから、そしてエチオピアなどアフリカからもやってきて、この狭い土地の《内側》に入植するのです。そしてパレスチナ人に対し、たくさんの問題を引き起こします。私たちにとって大変な苦悩です。21世紀に生きているというのに・・・
私たちはすべての国際社会に向かって、私たちの自由に向けての闘いを支援して欲しいと懇願しています。自由以外に何も望んですらいません。

N  ここに来ている私たちは,パレスチナのみなさんの状況がわかるから今の話も理解できます。でも、ここに来られない人たちは理解を示そうとしても自爆攻撃事件があると、引っ込んでしまいます。自爆攻撃は、パレスチナを理解し支援しようとする人たちの運動の広がりを阻んでいるとは思いませんか。

S  もし今、国際社会が、私たちの必要としていることを実現することができるというのならばあなたの言うことは正しいです。私たちはイスラエル占領下で、このように長いこと生きています。国際社会は、私たちの苦しみを感じなくてはなりません。そしてイスラエルに撤退するよう圧力をかけるべきなのです。でもそうはしませんでした。私たちが自分達でイスラエル軍に反撃するまでは。これはイスラエルとパレスチナの間の戦争です。
外側から見れば、パレスチナ人はイスラエル人を殺し、イスラエル人はパレスチナ人を殺している。これがフェアな見方となるのかもしれません。それでしたらかまいません、戦争なのですから。私はそれ以上のことは望みません。
けれども、イスラエル側に対してのみ肩を持ち、パレスチナ側の肩を持たないとしたら、それは不公平です。この視点でいえば、イスラエル側の苦しみを大きくテレビ画面で取り上げる一方、パレスチナ側の苦しみを隠すイスラエル・シオニストのメディアに国際社会は洗脳されています。世界はイスラエル側に共感できても、パレスチナ側のやることに共感しません。もしフェアであろうとしたら、パレスチナ人の苦しみを見るべきです。私たちは日本に語りかけるメディアを持っていませんし、アメリカにも手が届きません。アメリカのジャーナリストが最近ここへ来ましたが、それはアメリカのごく一部に語りかけられるだけです。
ほとんどはイスラエル側の肩を持つメディアです。メディアは巨大なゲームで、私たちが制御できるものではありません。
これがメディアの問題です。

N  パレスチナ人による自爆攻撃がなかったらシャロンが困るのではないでしょうか。シャロンはそれを必要としていますし、うまく利用していますね。

S  私たちは解決方法を探そうとしています。解決の隔たりとなっていることは、シャロンはとにかく占領を続け入植地を広げるつもりだというところです。
私たちが反撃すれば、「パレスチナ人が私たちを殺すんだからもっと占領地を拡大しよう」と言います。私たちが攻撃をやめたら、今まで通りの政策を続けようと言います。
では私たちの戦略はどんなものか。
イスラエルへの反撃を続けることです。
確かに高いコストを払っています。シャロンは、さらに多くのパレスチナ人を殺すでしょう。でもシャロンは、イスラエル人に安全をもたらしていません。イスラエル人は、後になって彼が英雄ではなく、最悪の人物だったと思い起こすでしょう。
たとえば先週、シャロンは15人のパレスチナ人の児童を殺しました。このガザで。軍事部門のリーダー・サラッシュ・ハッダを殺すというのが口実でした それに対して昨日パレスチナ側が7人のイスラエル人を殺しました。2人のパレスチナ人に対して、1人のイスラエル人です。ゲームの最後にイスラエル人はシャロンがイスラエルを最悪の状況へと追いやる人間だとわかるでしょう。そしてシャロンを止めるでしょう。
でも私たちが反撃せずにいたらどうでしょう?イスラエル人の目には、彼は英雄と写るでしょう。イスラエル人を守りとおし、入植地を広げ、占領政策を支え続けた人として。その意味で、イスラエル内での私たちの軍事行動はパレスチナの、イスラエル原理的シオニストに対する挑戦なのです。
移民の数は、現在スローダウンしています。イスラエル人のなかからイスラエルを去る者も出ています。経済状況はよくありませんし、治安も悪い状況です。
これら経済や安全は、イスラエルに外からやってくるときの前提条件となっています。はるか昔2000年前、ここに彼らの先、先、先祖たちが住んでいた「先祖の地」なのだから・・・という理由でこの聖地に定住するようイスラエル政府は呼び寄せています。ここに来れば安全で、裕福に暮らせると言って。これがシオニズムの前提条件です。そして彼らは私たちの土地を占領し、私たちを犠牲にして自分たちの国家を築き上げようとしています。
わたしたちの抵抗は、このイメージを崩すことです。
もちろん、国際社会の目にはこのやり方では私たちの立場はよくなりません。なぜならばメディアが公平ではないからです。でもイスラエルとの関係では、本当の対決なのです。私たちは弱く、武器もありません。でも対等に戦っています。これは私たちが直面していることへのチャレンジです。私たちは軍事行動をやめるわけにはいきません。

N  殺す人間の数を競っても解決にはならないのではないでしょうか。

S  でも他には解決法がありませんから。

N  自爆でパレスチナ人は多くを失っています。イスラエル人も。シャロンは何も失っていません。軍事行動にかけるお金と労力をハマスの社会活動やパレスチナの状況を世界に知らせることに力を入れた方が外の世界には効果的です。そういうことならば私たちもお手伝いできます。

S  これはもう35年以上も前から繰り返される議論です。私たちは何も達成していません。イスラエルは入植地を拡大しています。

N  それであきらめてしまったのですか。

S  いえ、これだけではダメダと考えたのです。私たちは、イスラエルはイスラエル軍の行為に対し、それに見合ったコストを払わなくてはならないのだということを提示しているのです。
たとえば、あなたがやってきて私の首を絞めたとします。そして私に叫ぶなと言います。でもそれは無理な話です。あなたが首を絞めている間は、私が叫ぶのをやめることはできません。
これがイスラエルの占領です。
イスラエルは、私たちの子どもを殺します。私たちは叫びます。でも私たちの叫びや怒りは、国際社会には届いていません。何もしてくれません。ジェニン後(2002年4月のジェニン難民キャンプ大侵攻の事)に何をしましたか?国連のレポートでは、パレスチナ人に対する大量虐殺がなかったとあります。大量虐殺の定義ってなんですか?大規模の攻撃があって、村全体を破壊してもそうは呼べないというのですか?あまりにもばかげています。
私たちはハマスの人間です。イスラエルに多くのチャンスを差し出してきました。イスラエル側に伝えます。「わかりました。軍事行動をやめましょう。その代わり、少なくともイスラエルが占領地から撤退するという希望を与えてください」と。
次の日に何が起こるかと言えば、シャロンがやってきて15人殺すんです。彼はゼッタイやめない。
だからこちらも続けます。その間にシャロンにたくさんのパレスチナ人が殺されるでしょう。でも最後には彼も疲れ切ることになり、彼のシステムは内部崩壊するでしょう。パレスチナ側もイスラエル側も苦しみます。
もし国際社会がこの流血状況を止めたいなら、イスラエルに解決策を強制しなければなりません。私たちは別に不可能なこと要求してはいません。撤退させればいいのです。私たちの土地から。

N  あなたにとって本当にもう長い間この闘いが続いていますね。本当にいろいろなことを試みてきたのだと思います。過去については何も言えません。
でも今は何かが変わろうとしています。私も以前はパレスチナの知識がなくて、アメリカから流される情報のなかだけでものごとを見ていて、パレスチナ人はテロリストかなんかだと思っていました。
それでも何か変だと感じました。それを自分の目で確かめたくなってこの春(2002年)パレスチナにやってきました。そして西岸地区とガザを訪ねました。ここで何が起きているのか知りたかったから。そしてあなたには及びませんがいろいろなことを知りました。
それをレポートしてメールで友人達に流したら、たった10日間で3万人もの人がそれを読んだことを知りました。多くの人が次々に転送を重ねたからです。それを読んだ人々から感想をたくさんもらいました。なぜなら彼らもまた何かへんだと感じていたからです。そしてここで起きていることを知りたかったからです。
すべての人が大手メディアから流される情報をそのまま鵜呑みにしているわけではなくなってきているのです。
その後、たくさんの人が何とかしたいと思っていることを知りました。そして人々はお互いに結びつくことができるようになっています。以前よりも簡単に。何かが動き始めているのです。特に9・11後の今。けれどもその動きをいつも阻止してしまうのが自爆事件なのです。
だからとにかく自爆はやめてほしいのです。パレスチナのために。

S  わかりました。あなたに同意します。私たちは自爆攻撃をやめる用意があります。イスラエルが占領地から撤退するつもりがあるならば。

N  だめ!

S  彼らが撤退しなかったら(わたしたちに)何が起こるでしょう?

I(同席していた地元パレスチナ人)  彼女は一般の日本人が思っていることや聞きたがっていることを代わりに話しているんだよ。彼女はパレスチナの状況をよくわかっているし、伝える努力をしているよ。ここに来る前、日本で二ヶ月に30回も講演したんだ。

S  講演というのはどこでやっているのですか?

N  日本のいろいろな場所でしました。北も南も。毎週末に呼ばれたところへ行きました。平日は働いていますから。

S  これまでも3つか4つの日本のテレビチームと話したことがありますがかれらはあなたと同じようなことを言っていました。日本人は知らないと。
イスラエルに対して、国際社会に対して、もう何度も言ってきました。「イスラエルが撤退しさえすれば私たちは反撃をやめる」と。シャロンの反応はと言えば、彼はガザ地区を攻撃したのです。
最近も私たちは3月に「ハマスはイスラエル内での軍事行動をやめる」という宣言文を出しました。そして実際に一定期間守りました。でもイスラエル側は私たちを殺し続けました。何回もそういうことが繰り返され、アメリカもイスラエルに圧力をかけません。
ハマスは軍事行動をやめるとして、それでハマスやパレスチナは何が得られるというのですか。

N  今回ガザをイスラエルが攻撃してくる直前もハマスは休戦宣言をしようとしていたというのは本当ですか。

S  はい、その通りです。

N  ならば、そういったことを広く伝えることのほうが自爆攻撃を続けるより効果があるのではありませんか。

S  そうですね、あなたがたがメッセンジャーですから伝えてください。「ハマスは休戦の準備ができていたので休戦宣言を出し、人々に軍事行動をしないように要請していた。それなのにシャロンはもっと多くのパレスチナ人を殺し続けた」ということを。それが現状です。

N  自爆をやめた後も、シャロンだけがそれでも殺し続けているということを見せることで,世界の人たちにはっきり誰が間違っているかを証明するチャンスなのに・・・。ハマスがいつもそこでシャロンと同じ土俵に上がってしまう。

S  世界中の人はシャロンが間違っていることも占領がよくないこともわかっているでしょう。

N  みんながわかっているわけではありませんし、特に政府を動かすにはとにかくテロが邪魔です。テロリストを支援すると言われることに政府は恐怖をもっています。

S  だから何度も私たちは停戦してもいいと言っていますが、イスラエルが攻撃を続けるのです。イスラエルが撤退するなら、すぐ抵抗運動は自動的に終わります。イスラエルが占領しているのであって、パレスチナが占領しているわけではありません。
イスラエルが撤退するように全世界がプレッシャーをかけるべきです。私たちは国際社会に公正な解決策を見つけて欲しいと頼んでいます。イスラエルが撤退すればパレスチナ人は平和に暮らすことができます。一つの表現があります。「木の中に刺さった針」木の中に深く刺さった針は簡単には抜けないですね。イスラエルの占領も同じこと。パレスチナの土地に深く刺さった占領政策はやさしい平和的な手段では取り除くことはできない。強い圧力をかけなければ無理です。

N  アメリカやイスラエルは産業や日常生活を含むパレスチナ社会の全体にじわじわとゆっくりプレッシャーをかけています。その状況が実は深刻なので、そうしたことを少しでもいろいろな人々に知らせたいと思っています。でもそれをやろうとするたびに爆破事件が起こり邪魔されてしまう。あなたたち(ハマス)はイスラエル側に立っていますよ。

S   あなたの環境や社会とまったく違うのです。私たちは世界から切りはなされています。彼らはパレスチナ人がいることも認めていません。だから闘わなくてはならなかった。私たちはここにいると証明しなくてはならなかったのです。そして(自爆をはじめてから)今、世界はここにパレスチナ人がいることに気がつきました。
信じてほしいのですが、世界というものは弱い立場のものの声をけして聞こうとはしないものです。

N  私を驚かせたことがあります。イスラエルはアメリカ産の大きな戦車やF16などの戦闘機で攻撃しています。けれどこの小さな小さな国はけして音をあげません。普通の暮らしを続けようとし、ジョークを言って笑うことを失わないようにしています。なぜなのか・・・それはコミュニティが健全だったからです。この状況下にもかかわらず自分達の文化を維持し続けています。ここで私はたくさんのパレスチナ文化を見ることができました。そしてそれこそが最も大きな彼らの闘い(インティファーダ)だと知りました。だからそのことを書きました。それに対して多くの人が心を動かされ、たくさんのメッセージをくれました。自爆攻撃はパレスチナの闘いかたではありません。社会を維持し続けることそれがパレスチナの闘いでした。

S  それがパレスチナです。私たちの暮らしの一部です。

N  自爆攻撃をすることは、それがパレスチナの心だからではなくイスラエルの占領が原因のはずです。

S  そうです。私たちはイスラエルが占領しているから自爆をしているのであって、私たちは本来そういう民族ではありません。私たちは平和に暮らしたいです。自分達を教育したいです。自分達の社会のことに力を注ぎたいですし、貧しい人を助けたいと思っています。

N  夕べ,イスラエル軍はハンユニスの街の電気を切りました。私は難民キャンプのある家に泊まっていました。人びとはヒステリックになるのかと思っていました。でも誰もそうはなりませんでした。ただ彼らは状況を受け止め、外にゴザを敷き、横たわり星を眺めました。そして歌をうたい、アッラーに祈りをささげました。彼らは静かに、そして楽しんで過ごそうとこころみました。このような状況の中でです。これがパレスチナ人の姿です。私はそれを外の人々に伝えたいのです。だから自爆をやめてください。

S  おっしゃるとおりです。でも私は闘わざるをえない状況を説明しているのです。イスラエル社会に大惨事をもたらしているのは、あななたちのリーダーなのだとイスラエルの人たちに伝えたいのです。彼らのやり方は、イスラエル市民にもパレスチナにも苦闘をもたらします。このような政府は止めるべきなのです。止めるよう国際社会が働きかけてくれることを望みます。

N  よくわかりました。それに本当に胸が痛みます。私も今後パレスチナの人々が置かれている状況を多くの人に伝える努力をします。ですから殺すことを止めるよう努めてください。

S  わかりました。約束しましょう。

[2002年8月 ガザ・シャナブ氏の自宅にて]
(翻訳協力・今村和宏、文責・森沢典子)

  

パレスチナ・ナビより協力いただきました。

 
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